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株式会社仙仁温泉岩の湯

|文・写真・取材:信州若者会議 / 長野県出身

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1959年創業の須坂市の花仙庵「仙仁温泉 岩の湯」は、自然豊かな菅平高原の麓にたたずむ温泉旅館です。お客様に満足していただける宿作り、インバウンド観光への考えについて、社長の金井さんのお話を伺いました。

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代表取締役社長
金井辰巳さん


仙仁温泉の宿づくり

金井さん 我々は旅に対して「成熟した客層」に満足していただける宿づくりを行っています。「成熟した客層」とは、年齢性別問わず人生を大事にし、旅を大事にしている客層のことです。私は旅館に宿泊すること自体が大きな旅行体験になると思っています。その体験の中で、伝統はひとつの大きな要素と言えます。伝統は、2つに分けられるのではないでしょうか。ひとつは骨董品のような、趣味人のための伝統。例えば、三指合わせて「いらっしゃいませ」というスタイルですね。そしてもうひとつは、現代に息づく伝統です。例えば、旅館で出す食事を引き立たせるように木の葉を添えること。和食を提供する際にえんじ色のテーブルかけ、帯を敷いてもみじを散らす、日本人の美意識を蘇らせてくれるような伝統です。
我々は、後者の現代に息づく伝統を大切にしています。実際に、当館にお越しいただいたお客様から「東京・銀座に行ったってこんな和食はない。ここまでは出来ない。」という言葉をいただきました。東京でも木の葉一枚一枚なら仕入れることができますが、枝で仕入れることは難しい。自然を活かしたこの地でしかできないサービスで、和食の文化を提供しています。都市化、情報化が加速し、現代はストレス社会と呼ばれていますね。お客様は皆、「ゆっくりする」という体験を欲しているのではないでしょうか。私は、骨董品のような伝統は衰退していくと思います。ゆっくりしたいと思って宿泊するお客様が、肩肘張ってしまいますから。
観光は便利さとは関係ありません。例えば、「インターネットの回線が部屋にあります」ということ。お客様は日々忙しく、インターネットから逃げて宿泊をしたいはずです。我々は「お客様がいつテラスに座って星と対面するか」ですとか「露天風呂から見えるあの枝が邪魔だから切ろう」などを考えて設備を整えています。
また、当館はホームページを作っていません。もちろん関心がないわけではなく、あえてしていないのです。私が若い頃、過剰広告で騒がれていた時代がありました。どこの旅館に行っても「くつろぎの宿」や「安らぎの宿」と広告を打ち、旅館のいいところばかり写真に撮って掲載していました。広告を見て実際に行ってみたら、団体ばかりで全然くつろげない。嘘をつく気はないけれど、嘘になってしまうんですよね。そして、それが紙からホームページに変わりました。いくら広告にお金をかけても、設備投資をして、商品づくりをしっかりすべきだと思いますね。

インバウンド観光への意識について

金井さん インバウンド観光を考えるならば、欧米系の外国人観光客を戦略的に狙うべきだと思っています。なぜ欧米かというと、バリやハワイなど、リゾートや観光の歴史が長いから。彼らに「仙仁温泉ってすごいね、バリ島のどこそこのリゾートと変わらない!」と言われたら評判は口コミで広まっていくでしょう。2013年のデータで、世界で一番インバウンド観光が進んでいるフランスで8,300万人、次いでアメリカの7,000万人、スペイン6,000万人の外国人観光客が各国に訪れています。日本は世界的に見て、27番目、1,036万人であるそうです。
一方、2013年の日本人国内宿泊旅行者数は延べ3億2,041万人というデータがあります。観光・旅行業界はまず、その日本人国内宿泊旅行者を大切にすべきではないでしょうか。日本人は、世界的に見て、ファッションにも食べ物にも肥えていますよね。そのお客様、つまり日本観光客に感動を提供できたら、世界から自然とお客様が来るんです。「来るな」って言ったって来ますよ。
旅館の着工にあたり、国内の旅館を多く巡りました。昭和61年頃から「リゾート」って言葉が出てきました。この頃の日本はバブル期で、日本人がこぞってハワイのコンドミニアムを買い漁っていました。ちょうど同時期に世界の本物に触れるため、ヨーロッパにも渡りました。沢山のことを学びましたね。ヨーロッパの自然環境に対応した施設や、斜傾地に適した施設を建てたりと地形を活かした場作りをしていましたね。現在の仙仁温泉の6割は、ヨーロッパでの学びが活かされているのではないでしょうか。建物が「高級旅館です」と主張するわけでなく自然の中に佇んでいるようなイメージです。ですから、ヨーロッパのお客様が訪れても満足していただけます。
インバウンド対策を意識したのは、1998年に開催された冬季オリンピックの際、当館がオランダのVIPの指定旅館になった時ですね。男性が184センチ、女性が171センチと世界一平均身長が高いオランダ人の方々を迎え入れるにあたり日本人に合うサイズしか布団がなかったので、サイズの大きい布団を20組準備したことがありました。

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私は、小手先のインバウンド対策をするよりも、もっと本筋から入ってしまっていいと思っています。例えば、我々は「ホスピタリティ」という言葉を使わず「情け」と表現します。ホスピタリティは優しさや温かさを包含した言葉ですよね。これを日本人的な言葉ですと情けが当てはまると思います。心持ちとして、ホスピタリティの精神よりも情けの精神でいることで外国人観光客の方は満足して下さいます。彼らは、我々の情けを望んでいるはずです。日本人として情けの心で武装し、お茶やお花、サービス、建物、照明の文化を提供することが自然とインバウンドの対策に繋がるのではないでしょうか。

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