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株式会社桜井甘精堂

|文・写真・取材:地元カンパニー / 長野県出身

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代表取締役社長 桜井昌季さん

創業は文化5年(1808年)、信州小布施で200年の伝統を誇る栗菓子をつくる桜井甘精堂。安心安全で美味しい郷土の味を提供し、新しい味を追及し、栗菓子の販売にとどまらず、飲食店や喫茶店の経営も行っています。小布施の町を愛し、お菓子づくりを通じて地域に貢献する企業。伝統を大切にする一方で、自ら小布施の町づくりに携わり、今後も町づくりの視点で新しい事業にチャレンジしていきたいという桜井社長にお話を伺いました。



~株式会社桜井甘精堂が取り組む事業について、また今後の展開についてお考えをお聞かせください~

キャプチャ 桜井甘精堂の現在のような食材へのこだわりやクオリティっていうのは、今の会長、七代 桜井佐七が作りあげたものなんです。甘精堂は200年前からあるけれど、創業からずっとこのクオリティを保っているわけではなくて、会長が若い頃に、あるアートディレクターに製品コンセプトまで徹底的に鍛えられて、こうあるべきというものが確立されました。200年の伝統の味とはいうけれど、ここまで徹底した商品や原料に対するこだわりは実は歴史としては50年位なんだよね、本当は(笑)。
会社経営で利益を出そうと思ったら簡単なのは人件費と原料の削減、と普通はなってしまうけれど、うちは確立されたそのこだわりがあるから、削っちゃいけないのがまさしくこの2つ。特に原料はリアルに商品に出る。小布施の栗菓子って一般的な栗菓子と違って一つの商品に対して栗の含有量が凄く多い。だからケチるとすぐわかるんです。だからそこはうちの最低限の縛りだね、原料にお金をかけるというか糸目つけないのは。経営しているレストランでも同じで調味料から何から原料にはこだわっています。

今甘精堂の事業としては、メインとしてお菓子づくり、お菓子の販売、レストランという、いわゆる食の事業。会社にはそれぞれ、その生存領域の枠、「フレーム」っていうのと、一番の理念の根幹である「センターピン」があります。「センターピン」で一番具現化しているのは泉石亭(せんせきてい)です。ちゃんとした舞台装置を作って、日常の家庭生活のちょっと上ぐらいの飽きない味を、ご近所さんどうぞ、という感じで何度も来てもらえるように提供しているレストランです。逆に「フレーム」のギリギリを狙っているのは何かというと、新しい長野駅ビルの甘味屋や新商品の『しあわせマロン』です。センターとギリギリを確認しておけば、あとはどうにでもなると思っています。栗に関してうちは自信がありますが、食と関係ない所で事業をするっていうのは全く当社の「フレーム」からアウトしてしまうと思っています。あくまで食、食材にこだわって新しい事業を考えています。


小布施の町とともに。

DSC_0047 (2) 栗の一番の産地は茨城県なんですよ。茨城県・熊本県・愛媛県で日本の栗の半分位採れてしまいます。ところが、この3県に名物となる栗菓子ってないんですよね。栗菓子で有名なのは、小布施、中津川・恵那、丹波篠山。この地域は栗の収穫量としては小さい。その中でも小布施っていうのは子屋の距離が非常に近い、その地域の狭さがメリットです、広いと分散してしまうから。それから、うち一軒だけがあって他に栗菓子屋が無かったら絶対に成り立っていないし、これは竹風堂、小布施堂、甘精堂、この3社が中心になってここまでやってきたから。しかもお菓子づくりや店づくり、食事メニューまで、うまいこと3社の立ち位置やターゲット設定がずらしてあるから共存していけるんですよね。これは会長達の世代からですが、見事にずらしていますね(笑)

うちの栗菓子の原料はトータルで25%位はこの小布施町内の栗です。実は県外産でサイズを揃えて洗浄してっていう手間を経た栗よりも地元の栗の方が高いんです。地元の栗を使えば使うほど原価はあがる。でも小布施町をつくるためには栗畑が絶対必要で、栗畑が無い小布施町はなんの魅力もない。うちも小布施町のロケーションにとても助けられていますし、あくまで小布施がベースで、小布施を中心に商売していくっていうのが私達のあり方です。経営判断からすると自分の首を絞めている部分もあるけれど、これを守るためにうちも農家さんに栗の苗木を斡旋し、採れた栗は買い取るというやり方もしています。甘精堂農園という自社の栗畑も昨年から始めました。ある時、近くのりんご農家のおばあちゃんが大変だからりんご畑を辞めるという事で、畑をお借りして栗を植えました。それから違う所からも話があって、そこは規模が大きいから管理は栗専門の農家さんにお願いし、出来た栗は全部うちで買い取っています。草取りなどは時々社員でやったり、自分達で栗を育てるっていうのは勉強になるしいいですね。そういった困っている農家さんには今は積極的には声は掛けられないけれど、受け皿として機能は持ちたいと思っています。


小布施の町づくりと甘精堂の新規事業

DSC_0005 (2) うちは栗に関しては自信がある。そして食に関する事業にこだわりを持ってやっていく。となった時に、栗っていう柱と、もう一本何かほしいなって今考えている所で、それが地物のフルーツです。次の展開はフルーツ事業です。この地域のフルーツって本当に他と比べ物にならない位、美味い。りんごにしても、ぶどうや桃にしても。小布施って栗のイメージしかないでしょ、でも栗以外のフルーツも凄く魅力的なのに知られていない。だけど栗以外の商品を桜井甘精堂というブランドでつくってしまうと軸がぶれるから、違うブランド名で、「甘精堂グループ」でやりたいとずっと考えていました。全く違うコンセプトで、フルーツの供給先も市場からではなく、小布施の生産者と直に繋がらないと事業としてやる意味がないと思っています。それにはやっぱり労力がかかるし、余裕ができたらと思っていたけど、町の観光協会や町づくりの仕事にも携わっていますが、ちょうど今小布施町の農業をどうしていこうかっていう話や動きが出てきています。朝市をやりたいっていう話が出てきたり、農家さんのネットワークをつくろうっていう話が出たり。そこにだいぶ頭突っ込んじゃっているんだけど、そういう動きや人との繋がりは協力な味方になるし、最近はそれにどうやって乗っていこうかって、町づくりの視点で考えるようになりました。町の仕事をしながら、2割3割自分の事業のイメージも持ってきておいて、周りから我田引水っていわれない程度に・・ちょっと邪な気持で(笑) 道のりは長いですけどね。海外進出だの何だのっていうけれど、町内でやることもいっぱいあるんだよね。

私がイメージしている甘精堂グループのフルーツ事業が形になるのは多分5年先だと思っています。5年間の中でとりあえず町づくりというスタンスで農業には絡んでいくと思います。農家さんには直接お客さんと接してほしいし、うちが全部やるんじゃなくて売る場を提供するとかね、いわゆるリアル産直(笑)。農家の人達にとっても新しい世界だし、うちもそのイメージ付けがしやすいし、お客さんにしてみたら、安心安全、生産者の顔が見える、こんなにわかりやすいことはない。それをやりたいんですよね。農家レストランのお菓子版みたいな。

DSC_0032 (2) 桜井甘精堂は現在正社員が80人位、パートさんが40人位で約120人。本社や各店舗で働いています。男性が15%位、あとは女性が占めています。年齢層も幅広く、長く続けて頂ける方が多いですね。 30年表彰も珍しくなく、結婚して辞める方も減りましたし、働きやすい会社だとは思います。
あとは、ほとんど目に見える派閥がない、企業というよりは家内制手工業の延長線かもしれないです。ある意味、家内制手工業の部分をどれだけ残すかっていうのが菓子作りのクオリティにも直結するので必要かもしれないですね。今現在は新規事業も踏まえてパティシエをメインに募集しています。欲しい人材としては・・馬鹿ができる人。悩むよりはとにかく行動する人。小布施町はそういう人が多いんですけどね(笑)

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